インターネット上のイラストコミュニティにおいて、しばしば「トレース(トレス)は技術が身につかない」「悪質な行為である」という極端な言説が見受けられます。しかし、これは「他人の著作物を無断トレスして自作として公開・販売する行為(権利侵害)」と、「上達のための練習法としてのトレス」を混同した完全な誤解です。
実際のアニメーション業界における新人動画マンの育成カリキュラムでは、先輩アニメーターが描いた原画を正確にトレス・クリンナップする訓練が徹底して行われます。これには明確な教育的理由があります。手本となる洗練された線を正確になぞることで、「プロがどこで筆圧を強め、どこで抜いているのか」「どのような曲線で立体を表現しているのか」という運動感覚を脳と筋肉に直接刷り込むことができるからです。
独学で伸び悩んでいる初心者は、やみくもにフリーハンドの模写を繰り返すよりも、信頼できるキャラクター線画トレス素材や線画練習用アニメイラストを活用したトレース練習をカリキュラムに組み込むべきです。手首の可動域やスピード感を体感した上で模写に移行することで、線の迷いが劇的に減少します。