スズメ目チメドリ科に属し、学名をGarrulax canorus、英名をChinese Hwameiと呼ぶガビチョウ。目の周囲を囲む勾玉のような鮮やかな白い筋が眉のように見えることから、漢字では「画眉鳥」と表記されます。中国南部からベトナム北部にかけてが原産地であり、現地では古くからその鳴き声を競わせる「鳴き合わせ」の対象として愛好されてきた由緒ある飼い鳥でした。
日本への侵入が本格化したのは、好景気に沸いた1970年代後半から1980年代にかけてです。安価で美しい声の観賞鳥としてペットショップへ大量に輸入されました。しかし、いざ一般家庭で飼育が始まると、前述の「突き抜けるような大音量」が日本の密集した住宅事情に全くそぐわず、飼育放棄による遺棄やケージからの逸出(いわゆる「かご抜け」)が多発しました。
日本の温暖湿潤な気候と、里山に広がるササや低木が鬱蒼と茂るヤブ環境は、ガビチョウの原産地の植生と酷似していました。天敵の少ない環境下で爆発的に増殖したガビチョウは、関東地方(神奈川県、東京都多摩地域、埼玉県、群馬県、茨城県)を中心に、南東北から甲信越、さらには九州北部(福岡県、熊本県など)へと生息地を急激に拡大させました。
この事態を重く見た環境省は、2005年に外来生物法に基づく「特定外来生物」へ指定しました。生態系への被害として、ササ藪などの地表近くで営巣・採食する在来種のウグイスやホオジロ類と生活圏が完全にバッティングし、彼らを縄張りから駆逐してしまう現象が各地で確認されています。ペット文化の無責任な消費行動が生んだひずみにより、愛玩鳥であったはずの鳥が、日本の生態系を揺るがす侵略者へと転落したのです。