イラストレーションにおいて、説得力のある陶酔状態を描くためには緻密な計算が必要です。単にパーツを崩すだけではグロテスクあるいは不自然なデフォルメに陥るため、プロの現場では視線の焦点と瞳孔の生理現象に細心の注意が払われます。
表情を成立させる最大のコアは、なんといっても寄り目(内斜視)と視線のコントロールです。キャラクターの焦点が定まっていない状態を演出するため、両目の黒目を極端に鼻筋へ寄せつつ、視線をわずかに上方向、あるいは完全な宙へと浮かせます。このとき、左右の瞳の角度を完全に対称にせず、数パーセントのズレや非対称性を加えることが「意識の混濁」を生々しく伝えるコツです。
瞳孔の描写においては、快感や極限状態での自律神経の乱れを再現します。極小にまで収縮させて狂気的な忘我状態を演出するパターンと、散瞳(大きく開いた瞳孔)にハイライトを散らしてトランス状態を演出するパターンの2系統が存在します。下瞼のラインをゆるやかに下げ、目頭にじんわりとした赤み(粘膜の充血)をグラデーションで配置することで、体温の上昇と感情の昂ぶりが一気に画面上に立ち現れます。