どれほど精緻なモチーフを描き込んでも、画面構成が平坦であれば厨二病特有のドラマツルギーは立ち現れません。観客を圧倒するダークファンタジーのイラスト構図には、確立された空間支配のセオリーが存在します。
最も効果的なのは、水平・垂直をあえて傾ける「ダッチアングル(傾斜構図)」と、画面奥から手前へと極端な遠近感をつける「広角パース(煽り・俯瞰)」の複合です。手前に巨大な手や武器、破壊された瓦礫を極端に大きく配置し、画面中央から奥へキャラクターの顔を据える「三層構造」を構築することで、鑑賞者の視線は強制的に画面の深奥へと引きずり込まれます。
キャラクターのポーズ構築においても明確なメソッドがあります。いわゆる中二病のポーズ集で男キャラに見られる定番――片手で顔を覆い隙間から鋭い視線を向けるポーズや、重心を低く落として獲物を狙う獣のようなクラウチング姿勢――を不自然に見せないためには、「コントラポスト(重心の不均等による身体の美しいねじれ)」の応用が必須です。背骨のS字ラインを強調し、肩の傾きと腰の傾きを逆方向に設定することで、静止したポーズの中に今にも暴発しそうなエネルギーを内包させることができます。
一方、近年大きな広がりを見せているのが、ギャップと脆さを巧みに操る中二病の女キャラのかわいい造形です。過剰な重装備や禍々しい呪具に対して、華奢な手足や繊細な表情を対比させることで、「重厚な宿命に立ち向かう可憐さ」という強烈なエモーショナルを生み出します。男性キャラが外に向かって威嚇するポーズを好むのに対し、女性キャラでは自己防衛や内省を感じさせる求心的なポーズ(両手で抱え込むような構えや内股気味の重心)を組み合わせることが、刺さるキャラクターを生み出す厨二病イラストの描き方のコツとなっています。