インターネット上の料理レシピや動画サイトでは、「大さじ2杯の油で揚げ焼きすればヘルシー」「弱火でじっくり揚げれば失敗知らず」といった手軽さを謳う情報が氾濫しています。しかし、スープカレー専門店の現場感覚および熱力学の観点から見れば、これらは大きな落とし穴を孕んでいます。
第1の誤解は「油をケチるほどヘルシーになる」という幻想です。油の絶対量が少なすぎると、食材を入れた瞬間に鍋全体の温度が40〜50℃近く急落します。熱源の火力を強めても熱容量が小さいため温度はすぐには戻らず、結果として食材はぬるい油の中で長時間煮込まれる状態になります。衣のない野菜素揚げにおいては、油の量が少ないほど食材への吸油率が跳ね上がり、油っぽく不健康な仕上がりになるという皮肉な現実が存在します。
第2の誤解は「揚げたてを間髪入れずにスープへ投入する」行為です。熱々の油から引き上げた直後の野菜内部からは、まだ激しい勢いで水蒸気が外へ放出されています。この状態で即座にスープへ沈めてしまうと、閉じ込められた蒸気によって外側のクリスピー層が一瞬でふやけて剥がれ落ち、野菜から溶け出した余分な油がスープ表面に重たい油膜を形成してしまいます。正しくは、「網付きのバットに立てかけるように置き、30〜45秒間油を切りながら蒸気を逃がす」こと。このわずかなレスティング(休ませ)の時間が、衣のない野菜の表面を固め、スープに浮かべてもパリッとした食感を維持する防壁を作ります。