所属事務所および関係者による公式発表によると、アントニオ猪木氏の直接の死因は心不全です。しかし、この心不全は単なる加齢に伴う衰弱ではなく、「全身性トランスサイレチン型アミロイドーシス(心アミロイドーシス)」と呼ばれる難病が心臓の筋肉に致命的なダメージを与えた結果引き起こされたものでした。
アミロイドーシスとは、本来は水に溶けるはずの異常なたんぱく質(アミロイド)が線維状に凝集し、全身の様々な臓器(心臓、腎臓、消化管、末梢神経など)に沈着して機能障害をもたらす疾患群です。厚生労働省が定める指定難病(指定難病28)に分類されており、日本国内の潜在的な患者数も極めて少ない希少疾患として知られています。
猪木氏が罹患していた「トランスサイレチン型」の場合、特に心筋細胞の隙間にアミロイドが沈着し、心臓の壁が異常に厚く硬くなります(拘束型心筋症)。その結果、心臓が血液を吸い込んで全身へ送り出す拡張機能が著しく失われ、頑健を誇った猪木氏の心臓であっても、次第に血液循環を維持することが困難になっていきました。
さらに猪木氏は、現役時代から40年以上にわたり重度の糖尿病を患っていました。血糖値コントロールのためのインスリン自己注射を続けながらリングに上がり続けていたことは有名ですが、長年の糖尿病による血管障害や免疫力の低下、晩年に繰り返した腸閉塞(イレウス)や胆嚢摘出などの複合的な身体的負荷が、アミロイドーシスの進行と相まって心臓への負担を極限まで高めていたことが判明しています。