岸信夫氏の辞職に伴い実施された2023年4月の衆議院山口2区補欠選挙は、現代日本の「政治の世襲問題」を象徴する激震地となりました。後継候補として擁立されたのが、信夫氏の長男で元フジテレビ報道記者、防衛大臣秘書官を務めた岸信千世氏です。
しかし選挙戦序盤、信千世氏の陣営が開設した公式サイトのトップページに、曾祖父・岸信介、大叔父・佐藤栄作、伯父・安倍晋三、父・岸信夫らの顔写真と役職を連ねた「家系図」が掲載されたことで、インターネット上を中心に猛烈な批判が巻き起こりました。「政治を私物化している」「親の威光しかアピールするものがないのか」といった非難が殺到し、陣営は家系図の削除に追い込まれるという異例の事態に発展しました。
ネット上の炎上とは対照的に、地元・山口2区(岩国市、柳井市、下松市など)の現場では、米軍岩国基地を抱える地域事情もあり、「中央パイプと安全保障政策を担える保守本流の議席を守るべき」という現実的な選択が根強く支持されました。結果として、元法相の平岡秀夫氏が猛追する大激戦となったものの、信千世氏が僅差で逃げ切り初当選を果たしました。
この選挙結果は、世襲に対する厳しい国民感情と、強固な後援会組織による集票力という、地方選挙区が抱える二重構造を鮮明に浮き彫りにしました。信夫氏は病床から息子の当選を見届け、政治家一族としてのバトンを次世代へと託すこととなりました。