ネット上で頻繁に飛び交う「だがそれでいい」という言い回しについて、多くの人が「有名漫画の決め台詞」として記憶しています。しかし、出版元の公式資料や原作コミックスの該当シーンを精査すると、驚くべき事実が浮かび上がります。原作に登場する正確な台詞は「だがそれがいい」であり、「それでいい」という台詞は本来の作中には存在しません。
この名言のオリジナルは、原哲夫氏・隆慶一郎氏による大ヒット戦国漫画『花の慶次 -雲のかなたに-』の主人公・前田慶次が放った一言です。作中において、慶次の愛馬である巨馬「松風」が気性が荒く人間を寄せ付けない猛馬であることを周囲が危惧した際、慶次は不敵な笑みを浮かべてこう言い放ちました。
「だがそれがいい」
この場面における慶次の意図は、「扱いにくい欠点や異端な性質があるからこそ、規格外の魅力がある」という強烈な肯定です。平均点に収まる優等生ではなく、尖った歪みや狂気すらも愛おしむ傾奇者(かぶきもの)の生き様を象徴するフレーズとして、連載当時から読者の魂を揺さぶりました。
一方、現在ネット上で流通している「だがそれでいい」は、この歴史的名言が掲示板(2ちゃんねる/5ちゃんねる等)で引用・パロディ化される過程で、「それ」に続く助詞が「が」から「で」へと置き換わり、意味合いが独自に変容して定着したネットスラングです。