京都の夏を語る上で欠かせないのが、京都 祇園祭 鱧 料理の結びつきです。祇園祭(別名「鱧祭」)の期間中、京都の町衆や料亭では当たり前のように鱧料理が振る舞われます。なぜ内陸の盆地である京都で、海魚である鱧がこれほどまでに重宝されるようになったのでしょうか。
その背景には、鱧特有の強靭な生命力があります。冷蔵技術や高速輸送網が存在しなかった江戸時代以前、明石や淡路島、紀州の海で獲れた魚を生きたまま京都へ運ぶことは至難の業でした。大半の魚が輸送途中で死んで鮮度を落とす中、皮膚呼吸能力が高く生命力の極めて強い鱧だけは、山越えの過酷な道のりを経てもなお桶の中で生きていたと記録されています。
当時の一流料理人たちは、生命力が強すぎるがゆえに骨が多く硬い鱧をなんとか美味しく供そうと研鑽を重ね、「骨切り」という唯一無二の包丁技術を完成させました。厳しい暑さの中でスタミナをつけ、無病息災を祈願する祭礼の席に、力強く生き抜いた鱧を捧げた歴史が、今なお受け継がれる「京都の鱧文化」の根幹を形作っています。