単なる局所の皮膚トラブルにとどまらないのが、マダニ咬傷の恐怖だ。マダニは多様な致死性の病原体を媒介する。国立感染症研究所の疫学データによると、近年特に警戒されているのが致死率10〜30%に達する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)である。SFTSは6日〜2週間の潜伏期間を経て、38度以上の高熱、倦怠感、下痢や吐き気などの消化器症状を伴って発症する。血小板や白血球が急減し、重症化すると多臓器不全に至る。
また、刺された部位から標的状(ターゲット状)に環状の赤みが広がっていく場合は、ライム病の潜伏期(数日から数週間)である可能性が高い。頭痛や関節痛、顔面神経麻痺などを引き起こす病気だ。さらに、高熱とともに手足の末端から全身へ高密度の赤い発疹が広がる日本紅斑熱も、潜伏期間が2〜8日と短く、急速に重症化するため一刻を争う。いずれの感染症も初期症状が風邪やインフルエンザに酷似しているため、刺された事実を見落とさないことが生命を分ける。