錦織圭のキャリアは、偉大な偉業と同時に、度重なる怪我との闘いでもあった。手首の手術、股関節のトラブル、そして長期間にわたるツアー離脱。世界トップクラスの選手が長期間戦線を離脱することは、精神的な絶望を伴う。引退の文字が頭をよぎるような暗闇のなかで、彼の足を前に進めさせたのは家族の存在だ。
2020年の結婚、そしてその後に誕生した子供の存在は、錦織のテニス観すらも大きく進化させた。「自分のためだけに戦う」時期を終え、「愛する家族のためにラケットを振る」という新たな原動力。リハビリの辛苦を笑顔で包み込む温かな家庭環境があったからこそ、彼は何度打ちのめされても不死鳥のようにコートへと戻ってくることができた。