二人の出会いは、演出家・串田和美が主宰していた伝説的な「劇団オンシアター自由劇場」にさかのぼる。当時、若手劇団員として舞台に情熱を傾けていた小日向文世と、8歳年下で同じく劇団員として活動していた彼女。稽古場で過ごす濃密な時間の中で互いの誠実さに惹かれ合い、自然な形で交際がスタートした。
当時の劇団生活は厳しいもので、経済的な余裕など到底なかった。しかし、舞台芸術への熱意と互いへの深いリスペクトが二人の心を繋いでいた。結婚後、妻は自らの女優業から退き、裏方として夫を支える道を選択。表舞台から静かに身を引いた彼女の内助の功こそが、のちに大器晩成を果たす名優の揺るぎない土台となったのだ。