運動中の姿勢において特によく報告されるのが、かかとをつけない「つま先立ち走行」だ。足裏全体で着地せず、爪先だけで弾むように足を進める。この背景には、足裏にかかる触覚の過敏さや、接地時の衝撃を受け止める前庭覚の独特なアンバランスが存在する。また、走る際に腕を前後に大きく振らず、胸の高さで曲げたまま固定したり下ろしたまま固めたりする動作も、自閉症スペクトラム障害を持つ子どもたちに目立つ傾向だ。
体幹を中心とした身体図式、つまり脳内における自分の身体のマップが不安定な場合、腕を自由に振ると全身のバランスが崩れやすくなる。あえて両腕を体幹近くに固定して物理的な「芯」を作る。転倒を未然に防ごうとする脳の防衛的なコントロールだ。本人は決してふざけているわけではなく、身体を必死に安定させようと工夫した結果にほかならない。