ネット上の掲示板やSNSで今なお散見されるのが、「アヴィーチー本人が歌っていると思っていた」という声です。結論から言えば、Wake Me Up ボーカルの正体は、アメリカ出身のソウル/R&Bシンガーソングライターであるアロエ・ブラック(Aloe Blacc)です。
ティム・バークリングは希代のトップDJであり天才的なコンポーザー(作曲家)でしたが、自らマイクを握ってメインボーカルを執ることはありませんでした。では、いかにしてこの奇跡的なクロスオーバーは生まれたのでしょうか。そこには音楽史の奇跡と呼ぶべきAvicii 名曲誕生秘話が存在します。
2013年初頭、ティムはロックバンド・インキュバス(Incubus)のギタリスト兼プロデューサーであるマイク・アインジガー(Mike Einziger)のマリブにある自宅スタジオを訪れていました。ダンスミュージックの単調なシンセサイザーの反復に限界を感じていたティムは、オーガニックな生楽器の温もりを取り入れたいと模索していました。マイクがアコースティック・ギターで奏でた素朴なカントリー調のコード進行に、ティムが即座にアップテンポなリズムパターンを構築。その日のうちに骨格が完成したといいます。
ボーカルの選出に際し、当初ティムはマイク・ポズナーなどを想定していましたがスケジュールが合わず、直感的に声をかけたのがアロエ・ブラックでした。スタジオに到着したアロエは、持参していた自身の作詞ノートを開きます。そこには、公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの言葉や、自分自身の人生の曲折を振り返りながら前夜ためためていた「Wake me up when it's all over」というフレーズが記されていました。
メロディを聴いたアロエはその場でリリックを当てはめ、マイクがギターを爪弾き、ティムがラップトップでビートを肉付けしていく作業は、驚くべきことにわずか数時間で一度きりのレコーディングで完了したと関係者は後に証言しています。3人の異なる音楽的ルーツが化学反応を起こした瞬間でした。