劇中で強烈な存在感を放つ日高先生の実在モデルは、宮崎県宮崎市および串間市を拠点に活動していた実力派画家・日高健三氏です。二科展などで活躍した本物の洋画家であり、地元で主宰していた「日高絵画教室」は、数多くの美大・芸大合格者を輩出する伝説的な教室として知られていました。
作中で描かれた「白いジャージ姿」「竹刀を片手に生徒を怒鳴りつける指導法」「朝から晩までひたすら石膏デッサンを描かせるスタイル」は、脚色ではなく生前の日高健三氏そのものの姿です。口を開けば「描け!」「描けぇぇ!」と叫び、理屈ではなく身体に絵を叩き込ませる苛烈な指導を行っていました。
しかし、その厳しさの裏には、生徒に対する常軌を逸した愛情と絵画への純粋な情熱がありました。月謝が払えない生徒にも指導を続けたり、生徒の進路のために骨を折ったりと、損得勘定を抜きにして若者の才能を伸ばすことに生涯を捧げた教育者でもありました。劇中で東村氏が描いた日高先生の姿は、恐怖の対象からやがて「人生最大の恩人」へと変わっていく人間の本質を忠実に捉えています。