身体に生じたかすかな違和感が脳血管の障害によるものかを瞬時に見極めるため、世界中の医療現場で標準化されているのが脳梗塞 FASTテストのやり方です。FASTとは、脳梗塞が疑われる際に出現しやすい代表的な3つの身体的サインと、時間経過の頭文字を取った指標であり、特別な医療器具を一切使わずにその場で高い精度で判定を下せます。
自分自身に違和感がある場合はもちろん、家族や同僚の様子がおかしいと感じた際にも、次の手順に沿って冷静に確認してください。
【Face(顔のゆがみ)】
まず「イー」と口を横に広げて笑顔を作ってみてください。左右対称に口角が上がらず、片側の口角だけが下がって動かない、あるいは片側から唾液が漏れてしまう場合、顔面神経を司る脳領域の虚血が強く疑われます。
【Arm(腕の脱力)】
両腕を前方に肩の高さまでまっすぐ伸ばし、手のひらを上に向けて目をつぶり、そのまま10秒間キープできるかを試します。脳から運動麻痺が生じていると、片側の腕が徐々に内側に回転しながら下へと落ちていきます。本人が「力が入っている」と思っていても無意識に脱落するのが典型的な特徴です。
【Speech(言葉の異常・ろれつのもつれ)】
「ラ行・パ行」を多く含む短いフレーズ(例:「ラ・パ・カ」や「今日は天気が良い」)を声に出して発音します。舌がもつれてろれつが回らない状態や、単語が頭に浮かんでいるのに言葉として紡ぎ出せない(失語症)、他人の話している言葉の意味が理解できなくなっている場合は、脳の言語中枢に血流障害が及んでいる証拠です。
【Time(発症時刻の記録と行動)】
上記3つのうちどれか1つでも該当すれば、脳梗塞の疑い率は7割を超えると報告されています。この段階で最も重要なのは「最後に普段通りであった時刻(発症推定時刻)」を正確に時計で確認し、迷わず119番へ連絡することです。これら一連の動きこそが、生死と後遺症の重さを分ける初動の分水嶺となります。