地域を揺るがし続けた菓子配りに終止符を打ったのは、兵庫県警察による執念の法整備と徹底した包囲網だった。2020年に施行された改正暴力団排除条例は、暴力団が勢力誇示や組織への加入勧誘を目的として、18歳未満の青少年に金品を渡したり、事務所に立ち入らせたりする行為を全国で初めて名指しで禁止した。違反者には段階的な指導を待たず、直ちに懲役刑や罰金が科されるという異例の即時罰則が導入されたのだ。
きっかけは組織の分裂抗争が激化したことにある。いつ銃弾が飛び交うか分からない緊迫状態のなか、総本部に無邪気な子どもや保護者が群がる光景は、治安維持の観点から極めて危険な火種と化していた。兵庫県警は「子どもを人間の盾にしている」との危機感を強め、従来の行政指導レベルから一歩踏み込んだ強硬措置に舵を切った。徹底的な張り込みと証拠収集を重ね、条例違反を口実に組織幹部へ即座に捜査のメスを入れられる態勢を確立したのである。