日本テレビ系列で放送された『母になる』は、誘拐事件によって引き裂かれた家族の再生と葛藤を重厚に描いたヒューマンドラマだ。当時、オーディションを勝ち抜いて柏木広役を射止めた道枝駿佑は、演技未経験に近い状態でありながら物語の中核を担うこととなった。育ての親と生みの親という二人の「母」の間で揺れ動く複雑な少年心を、言葉以上にその瞳の揺らぎで表現してみせた。
「とにかく目が離せなかった」――当時現場にいた制作関係者は語る。テレビドラマ初出演とは思えない呑み込みの早さと、カメラが回った瞬間に纏う独特の空気感。共演者や監督からの要求を瞬時に理解し、自らの身体を通してアウトプットする素質は、まさに才能の塊そのものだった。