建物の劣化以上に恐ろしいのが、住民コミュニティと管理組織の崩壊に伴う限界マンションとスラム化問題です。築50年を経過した共同住宅では、「二重の高齢化(居住者の高齢化と建物の高齢化)」が必然的に発生します。所有者が死亡した後に相続人が相続放棄をしたり、名義変更されないまま放置された「所在不明住戸」の比率が年々上昇しています。
所在不明住戸が増加すると、第一に管理費や修繕積立金の滞納額が累積します。第二に、共用部分の補修や大規模修繕を決議する総会で必要な議決権母数が確保できなくなり、規約改正や緊急修繕が法的に決議不能に陥ります。エレベーターが故障しても修理できず停止したまま放置され、エントランスにはゴミが散乱し、外壁タイルの落下危険区域に虎ロープが張られたまま放置される――これが都市部の一角で実際に起きているスラム化の現場です。
こうした破綻物件を掴まないためには、仲介会社の美辞麗句を鵜呑みにせず、自らの目でマンション管理状況の確認項目を精査しなければなりません。内覧時に必ずチェックすべき実務項目は以下の通りです。
①重要事項調査報告書の確認:管理費・修繕積立金の総額および滞納額の有無。滞納住戸率が全体の5%を超えている物件は警戒水準です。
②長期修繕計画書の有無と改定履歴:直近5年以内に実勢価格を反映した改定が行われているか。計画自体が存在しない物件は即座に見送るべきです。
③共用部分の日常管理状態:駐輪場の放置自転車、ゴミステーションの整頓状況、掲示板の張り紙の日付。掲示板に「滞納者への警告」や「マナー悪化への苦情」が何年も色褪せて貼られている物件は、管理組合の機能不全を雄弁に物語っています。