ネット上のコミュニティやSNSの一部では、「シモ・ヘイヘは長距離から神の眉間を撃ち抜いて瞬殺するのではないか」という極端な一撃必殺論が散見されます。しかし、バトルの劇的緊張感を重視する本作の作劇上、単純な「ワンショット・ワンキル」で神が沈む展開はあり得ません。ここには、読者が陥りがちな二つの盲点が存在します。
第一の盲点は、「ラグナロク闘技場の閉鎖性」です。これまでの試合会場は、神側の配慮や要望によってロンドンの街並み(第4回戦)が再現された例外を除き、基本的には遮蔽物の少ない円形闘技場です。もし通常ステージのまま戦えば、スナイパーは間合いを一瞬で詰められ、圧倒的な腕力を持つ神に肉弾戦で粉砕されてしまいます。したがって、シモ・ヘイヘ戦の成立には、「会場全体を猛吹雪が吹き荒れる極寒の森林地帯へと改造するステージ申請」が絶対条件となります。この環境構築そのものが、戦いの前哨戦となるのです。
第二の盲点は、「銃撃戦におけるダメージ描写の構造」です。格闘漫画である本作において、銃弾は相手の四肢を奪い、感覚を狂わせる「削りのプロセス」として描かれるのが定石です。一発で勝負が決まるのではなく、神が放つ猛攻を雪中に潜航して紙一重で回避し続け、じわじわと神の体力を削り落とす「持久戦の過酷さ」こそが、シモ・ヘイヘ戦の真の醍醐味となるはずです。