「東大の柏キャンパスを目指して受験勉強したいのですが、どの学部の願書を出せばいいですか?」――大手知恵袋や受験生向け掲示板で定期的に投げかけられるこの疑問に対し、結論から言えば東京大学柏キャンパス 学部という枠組みは開校以来一切設置されていません。東大の学部生(1・2年生)は駒場キャンパスで教養課程を履修し、3・4年生になると法学部や工学部、理学部などの各本郷・駒場キャンパスの専門学部に進学します。
柏に学部が存在しない背景には、東京大学が1990年代後半から推し進めた「三極構造構想」という明確な組織戦略があります。本郷を「伝統的な学問の継承と深化」、駒場を「学際的な教養教育と新しい学問の萌芽」と位置づけるのに対し、柏は「冒険的研究・先端融合科学のフロンティア」として1998年以降に新設されました。既存の学部組織の縦割り構造をあえて排除し、学問の境界領域を切り開く大学院生と研究者のみを集積させたのが、このキャンパスの正体です。
その中核を担うのが、生命科学・環境学・物質科学を横断する新領域創成科学研究科です。さらに、梶田隆章特別栄誉教授らのノーベル物理学賞研究に連なる宇宙線研究所、物質の極限状態を探る物性研究所、中野から移転統合された大気海洋研究所という国内屈指の巨大研究所が並び立っています。敷地内を歩く学生の平均年齢がやや高く、海外からの研究員が目立つのは、ここが「日本の科学技術政策の最前線に位置する大学院大学」として機能している証拠です。