鉢植えのオレガノが数日で無残な姿へと変貌してしまう現象は、病原菌が突発的に発生したわけではありません。その根底には、原産地である地中海沿岸と日本の夏における気候環境の決定的な乖離が存在します。石灰岩が風化した乾燥地帯で強烈な日差しと吹き抜ける乾いた風を浴びて進化したオレガノにとって、湿度が80%を超え連日雨が降り注ぐ日本の梅雨から盛夏は、生存限界を超える過酷な環境そのものです。
オレガノが枯れる決定的な理由を植物病理の観点から分解すると、主因は「根圏の酸欠による根腐れ」と「密生した茎葉の内部で発生する蒸れ(灰色かび病・軟腐病)」の2点に集約されます。市販の培養土をそのまま使い、一般的な草花と同じ感覚で毎日水やりを繰り返すと、鉢内の水分が抜けず毛細根が酸欠状態に陥ります。根が呼吸困難に陥った状態で気温が上昇すると、用土内の雑菌が急激に繁殖して導管を破壊し、ある朝突然株全体が倒伏する現象を引き起こすのです。
現場の栽培実験でも、梅雨期に無剪定のまま放置された株は、内部の湿度が95%以上に達し、地面に接する下葉から黒褐色に変色して落葉する初期症状が確認されています。この変色を「水不足による萎れ」と誤認してさらに散水してしまう悪循環こそが、初心者が陥る典型的な枯死トラップです。