「先月治ったばかりなのに、なぜまた発熱して水疱ができるのか」という疑問に対し、感染症専門医の臨床データは極めて明確な回答を示しています。手足口病の2回目が発生する最大の理由は、原因となるウイルスが単一ではなく複数種類存在するからです。
手足口病を引き起こす病原体は、ピコルナウイルス科エンテロウイルス属に分類されるウイルス群です。代表的なものとしてコクサッキーウイルスA16(CA16)、エンテロウイルス71(EV71)が古くから知られており、2010年代以降は強い発疹と非典型的な症状をもたらすコクサッキーウイルスA6(CA6)やコクサッキーウイルスA10(CA10)の流行が定着しました。これらは同じ「手足口病」という病名で括られていますが、免疫学的にはまったく異なる構造を持つ独立したウイルスです。
ひとたびCA16に感染すると、体内にはCA16に対する特異的抗体が獲得され、同型ウイルスに対する免疫が成立します。しかし、この獲得免疫はEV71やCA6など他の型に対して十分な交叉防御効果を発揮しません。そのため、体内に別の型のウイルスが侵入した際、免疫系は「初感染」と同じ反応を起こし、手足口病の症状が再び発症します。
国立感染症研究所などの疫学動向でも、流行シーズン中に地域内で複数のウイルス型が同時または時間差で巡回するパターンが観測されています。潜伏期間は通常3〜5日(最大7日程度)と短く、集団生活の中で異なる型のウイルスに相次いで曝露された場合、早いケースでは前回の治癒からわずか3〜4週間という再感染間隔で2度目の診断を受ける事態が生じるのです。「同じ年に2回かかる」という現象は、医学的な例外ではなく、ウイルスの交代劇によって誰にでも起こり得る日常的なリスクと言えます。