情報が錯綜するWeb環境下では、科学的根拠を欠いた誤った言説が定着しています。命に関わる判断を誤らないためにも、以下の代表的な誤解を明確に是正しなければなりません。
誤解1:「B型は症状が軽いから病院に行かず自力で治せる」
「A型=重症、B型=軽症」という二元論は危険な俗説にすぎません。国立感染症研究所などの疫学調査によれば、小児におけるインフルエンザ脳症の発症率や、基礎疾患を持つ高齢者の死亡率は、A型とB型で有意な差がないことが実証されています。特に小児のB型感染では、ウイルス性筋炎を合併して「下肢の激痛によって突然歩けなくなる」といった重篤な症状を引き起こす危険性があり、軽視は禁物です。
誤解2:「予防接種を打ったのに感染したから、今年のワクチンは無意味」
現行のインフルエンザワクチンは、A型2株(H1N1、H3N2)とB型2株(山形系統、ビクトリア系統)の計4種類を網羅した4価(クアッドリバレント)ワクチンです。ワクチンの主たる目的は「感染の100%阻止」ではなく、「体内での急激な増殖を抑え、脳症や肺炎といった重症化・死亡を防ぐこと」にあります。接種済みでありながら発症した人が「38℃未満の微熱や軽い咳だけで済んだ」ケースこそ、ワクチンの免疫応答が奏功した証左です。
誤解3:「抗ウイルス薬を飲んで熱が下がれば、翌日から出勤・登校してよい」
タミフルやゾフルーザなどの抗ウイルス薬は、ウイルスの細胞外への遊離や増殖機構を強力に遮断します。そのため服用後24〜48時間以内に劇的な解熱をもたらすケースが目立ちます。しかし、解熱と体内のウイルス完全排除は同義ではありません。解熱後であっても、鼻腔や咽頭からは数日間にわたって感染力を持ったウイルスが排出され続けています。体感が回復したからと自己判断で活動を再開することは、職場や学校におけるスーパースプレッダー化を招く極めて危険な行為です。