日本列島の豊かな森林生態系において、両者はどのように棲み分け、命を繋いできたのでしょうか。生物分類学上、ムササビもモモンガも同じ哺乳綱齧歯目リス科齧歯類の分類と生態に属していますが、生活空間や行動パターンには明確なコントラストが見られます。
北海道の原生林や防風林に生息するエゾモモンガの特徴と生息地に注目すると、ユーラシア大陸北部に広く分布するタイリクモモンガの亜種であり、冬場には白と明るいグレーの美しい保護色を纏います。厳しい寒さに耐えるため、真冬には1つの樹洞(木のウロ)に複数匹が身を寄せ合って集団越冬する社会性を見せる点も、単独行動を基本とする本州のムササビとは大きく異なる生態的特徴です。
両者の具体的なスペックと相違点を、客観的データに基づいて整理した比較表が以下となります。
夜の森で耳を澄ませると、夜行性の習性と鳴き声の特徴からも両者の存在を克明に探り当てることができます。ムササビは縄張りを主張する際や繁殖期に、喉を鳴らすような野太い「グルルル」「カッカッカッ」という重低音を響かせ、時には人間のうめき声のようにも聞こえるため、かつて古来の日本では「野衾(のぶすま)」と呼ばれる妖怪の正体と恐れられていました。これに対してモモンガは、シジュウカラなどの小鳥が鳴いていると錯覚するほど繊細な高周波の「ツィー」「チチッ」という鳴き交わしを行います。体格の差は声帯の質量にも直結しており、鳴き声のピッチの違いは現場観察における決定打となります。