光文社の『美ST』が主催する「国民的美魔女コンテスト」が2010年にスタートして以来、このムーブメントは単なる一過性の流行を超え、日本独自のカルチャーとして定着しました。歴代のグランプリ受賞者をはじめとするコンテストファイナリストたちは、40代から時には60代に至るまで、メディアの第一線でその美貌を披露し続けています。
筆者が過去に取材したコンテスト現場の控え室や、発表会直後の囲み取材での肉声には、華やかなステージ上とは異なる切実なリアリティが宿っていました。ある歴代受賞者は、手記や単独インタビューの中でこう吐露しています。
「ステージの強いライトとプロのヘアメイクがあれば、誰でも一時的に15歳若返ることは可能です。でも本当に恐ろしいのは、イベントが終わってホテルのエレベーターの鏡に映る、疲れ果てた自分の無修正の顔でした。『美魔女』という肩書きを背負った瞬間から、近所のスーパーへゴミ出しに行くだけでもすっぴんを見られてはいけないという強迫観念に苛まれるようになりました」
オンラインコミュニティ(5ちゃんねる、知恵袋、Xの美容クラスタ)におけるネットの反応と評判を定点観測すると、大衆の評価は二極化しています。「50代でこのスタイルと肌艶を維持しているのは純粋に尊敬に値する」「努力の継続力は並大抵ではない」と称賛する肯定派が存在する一方、「年齢に抗いすぎて首から上だけが浮いている」「SNSの写真とワイドショーの中継で輪郭が別人のようだった」といった冷徹なツッコミも後を絶ちません。
この実年齢と見た目のギャップが生み出す違和感の根源は、パーツごとの経年変化の不一致にあります。顔面はレーザー治療や注入系施術、アプリ加工でピンポイントに若返らせることができても、首の横じわ、手の甲の血管の浮き、鎖骨周りの肉の削げ方、そして声のトーンや立ち居振る舞いには、生きてきた年月がそのまま刻まれます。無修正の動画や対面取材において視聴者が覚える「かすかな違和感」は、この細部の情報量を脳が無意識に感知している結果と言えます。