主人公・喜久雄を体当たりで演じた吉沢亮と、その幼馴染であり生涯のライバル・俊介を演じた横浜流星。二人が魅せた壮絶な演技合戦は、単なる歌舞伎の再現にとどまらない濃厚な人間ドラマを作り上げた。吉沢亮は、母・藤駒から受け継いだ血脈の業と、芸に憑かれた男の孤独を眼光ひとつで完璧に表現している。
一方、血筋に恵まれながらも喜久雄の天才的な才能に葛藤する俊介役の横浜流星も、鬼気迫る立ち振る舞いで観客を圧倒した。母の面影を抱きながら舞台に立つ喜久雄と、家柄を背負って苦悩する俊介。血縁と芸道の交差点に立つ二人の火花散る芝居があったからこそ、藤駒という母の「その後」の不在が、より重厚な虚無感として物語全体に響き渡ったのである。