インターネット上のトレーニング解説や古い指導書において、長年まことしやかに語り継がれてきた言説に「リアレイズは急須で茶を注ぐように、小指側を高くして持ち上げろ」というキューイング(合図)があります。しかし、現代のスポーツバイオメカニクスにおいて、この動作は極めてリスクが高いフォームエラーとして認識されています。
肩関節を極端に内旋(内側に捻る)させた状態で水平外転や外転動作を行うと、上腕骨頭の大結節が肩甲骨の烏口肩峰アーチに衝突し、腱板(棘上筋腱)や滑液包を挟み込む「肩峰下インピンジメント症候群」を誘発する恐れがあります。「小指を極端に上げる」意識は、三角筋後部の収縮感を多少高めるように感じられるものの、代償として肩関節包内部の軟部組織に甚大な微小損傷を蓄積させてしまうのです。
安全かつ効率的な三角筋後部の鍛え方の現代的コンセンサスは、「手首は中間位(親指と小指が水平)、もしくはわずかな外旋位(親指側がわずかに上を向く角度)」を維持することです。手首の過剰な内旋に頼らなくとも、肘の向きを外側に保ち、肩甲骨の代償を制御すれば、インピンジメントの危険を完全に排除した状態で強烈な負荷をターゲットに集約できます。