当時の制作現場を知る関係者の証言や特番インタビューからは、プロデューサー・石井ふく子の徹底した現場主義が浮かび上がります。
石井作品の特徴として名高いのが「本物の食事を囲む食卓シーン」です。『明日がござる』でも、食卓に並ぶ料理はすべて消え物専門のスタッフがその場で調理した温かい家庭料理でした。山岡久乃が味噌汁をよそい、水前寺清子がお茶を淹れる。台詞を言いながら自然に箸を動かすその仕草は、入念なリハーサルと役者同士の阿吽の呼吸によって生み出された本物の日常でした。
また、主題歌「明日がござる」(歌:水前寺清子、作詞:平岩弓枝、作曲:山下毅雄)の存在も欠かせません。「ルパン三世」などの名曲で知られる山下毅雄の手による、どこか哀愁を帯びつつも前向きなメロディは、高度経済成長が一段落し、第一次オイルショックを経て先行きの見えない不安を抱えていた当時の日本人に力強いエールを送りました。
インターネット上のコミュニティやSNSに寄せられる視聴者の声を検証すると、次のような熱い反響が今も散見されます。
「子どもの頃、木曜8時になると祖父母と一緒にコタツに入って観ていた。水前寺さんの元気な声を聞くだけで、明日も頑張ろうと思えた」(60代男性)
「CSの再放送で初めて観たが、今のドラマにはない丁寧な言葉遣いと人への気遣いがあって、心が洗われる」(40代女性)
現代のスピード重視・刺激重視のコンテンツとは対極にある「間」の美学と情の通い合いが、時を超えて評価されています。