臨床現場において褥瘡の発生頻度が最も高い部位は、圧倒的に仙骨部である。日本褥瘡学会等の統計でも、褥瘡全体の約半数近くが仙骨部および尾骨部に集中している事実が示されている。褥瘡仙骨部の好発部位写真やカルテ記録を分析すると、自力で体位変換ができない臥床状態の高齢者において、骨の突出部とベッドのマットレス面がダイレクトに接触し続ける力学的な脆弱性が浮き彫りになる。
仙骨部に次いで発生が多いのが、大転子部(横向きに寝た際の骨突出部)、踵骨部(かかと)、坐骨部(車椅子座位時の座面接触部)だ。特に在宅介護の現場では、オムツ交換のたびに仙骨部へ強い摩擦が加わり、排泄物の湿潤環境(失禁による皮膚の浸軟)と相まって、皮膚バリア機能が著しく低下しているケースが目立つ。
訪問看護の現場を取材すると、家族の善意が招いてしまう皮肉なトラブルの実態が見えてくる。都内の訪問看護ステーションで10年以上褥瘡ケアに携わる専門看護師は、次のように現場の苦悩を語る。
「退院直後のご家族から『お尻が少し赤くなっていたので、血流を良くしようと毎日念入りにマッサージしていました』と告げられるケースが今も後を絶ちません。確認すると、すでに毛細血管が破綻した組織を外側から力任せに揉みほぐしたことで皮下組織がズタズタになり、あっという間に壊死組織が広がってステージ3寸前まで悪化していました。知恵袋やネットの古い情報を鵜呑みにしてしまうご家族の焦りを見るのは本当に胸が痛みます」
仙骨部は自重による垂直方向の「圧力」だけでなく、ベッドの背上げ時に体が足元方向へ滑り落ちる際の「ズレ力(せん断応力)」が複合的に作用する場所だ。背上げを行う際には、まず骨盤を起こして背抜き(背中や臀部の皮膚にかかった衣服やシーツの緊張を一度逃がす介助)を徹底しなければ、皮膚の浅層と深層の間で血管が引きちぎられ、DTIの温床を作り出してしまう。