インターネット上の掲示板やSNSでは、「Windows 11にアップデートしてからWordで文字が消えるバグが増えた」「MacのWordでもInsertキーの暴走が起きる」といった言説が散見されます。しかし、これらの情報にはハードウェア構造とソフトウェア仕様の混同による明確な誤解が含まれています。
まず、Mac版Wordにおいて文字が消える現象についてです。そもそもApple純正のMagic KeyboardやMacBookの内蔵キーボードには、歴史的に「Insertキー」そのものが存在しません。そのため、Windowsと同じ意味での「Insertキー誤打による上書きモード発動」はMacの環境では原理的に発生しない仕組みになっています。
もしMac版Wordを使っていて文字が勝手に置き換わってしまう場合、原因は上書きモードではなく、「選択した状態で次の文字を打ち込んでいる」か、macOS標準の「ライブ変換」機能との描画遅延、あるいはサードパーティ製キーボードを接続した際のリマップ誤認識です。文字が青くハイライト(範囲選択)された状態で打鍵すると、手前の文字が丸ごと消えて新文字に置き換わるため、これを上書きモードと勘違いする利用者が後を絶ちません。
また、Windows 11のWordでこの問題が頻発するように感じられる背景には、OSの不具合ではなく、近年のノートPCのベゼルレス(極狭額縁)化に伴うキーボードの小型化があります。キーピッチが狭まり、DeleteキーやBackspaceキー周辺のクリアランスが削られた結果、タイピング中に隣接キーを巻き込む物理的な接触事故が増加しているのが真相です。