正午前、すでに店先には長い列が伸びていた。今回注文したのは、看板の「特選海鮮丼」。運ばれてきた器を見て息を呑む。マグロの赤身、中トロ、カンパチ、真鯛、ホタテが幾重にも重なり、ご飯がまったく見えない。厚切りの身を醤油にくぐらせて口へ運ぶと、魚本来の力強い甘みと上品な脂が舌の上でとろける。鮮度の良さは歯ごたえの弾力に如実に表れていた。
そして、常連の間で密かに囁かれる限定裏メニューの存在だ。市場で規格外となった希少部位や端材が出た日だけ、厨房のホワイトボード裏にひっそりと書かれる「市場の賄い海鮮ユッケ重」。特製のニンニク生姜醤油と濃厚な卵黄が絡み合うこの一杯は、知る人ぞ知る幻の逸品である。運良くこれにありつけた日の満足感は、他では決して味わえない。