実刑判決を受け、服役を終えて社会に戻った後、彼を待ち受けていたのは激変した社会環境だった。かつての仲間や同世代のアウトローたちは、こぞってYouTubeにチャンネルを開設し、ABEMAなどのネット配信番組に顔を出し始めた。暴力の記憶を切り売りし、再生数を稼ぐ「アウトローカルチャー」のコンテンツ化。実話ノンフィクションの世界で語られていた裏社会の武勇伝が、デジタル空間の娯楽へと消費される時代が到来したのだ。
しかし、伊藤リオンはその潮流に一切乗らなかった。SNSでの自己顕示も、暴露本による過去の清算も拒絶。かつて名を馳せた不良たちがインフルエンサーとして小銭を稼ぐ姿を尻目に、彼は徹底して沈黙を守り続けた。カメラの前で過去を美化することも、謝罪のパフォーマンスを見せることもない。その頑ななまでの拒絶が、皮肉にも彼を取り巻くミステリアスな存在感をより強固なものにしていった。