長年にわたり、上野オークラ劇場は成人映画専門館としてのアイデンティティを保ってきた。ピンク映画というジャンルは、表現の自由と厳しい制作制限の狭間で、数多の気鋭監督たちが腕を磨く梁山泊の役割を果たしていた。限られた尺と予算の中で人間の情念や社会批評を叩き込む、極めて純度の高い映画道場だったのだ。
しかし、劇場の役割は時代とともに鮮やかなグラデーションを描いて変化していく。従来の常連客に加えて、映画史を深く掘り下げるシネフィルや、独特のレトロ空間に惹かれるカルチャー層が客席を埋めるようになった。猥雑さと芸術性が奇跡的な均衡で交差するこの場所は、いつしか東京屈指のカルトスポットとして再定義されたのである。