店頭に並ぶ茶色い皮の一般的な玉ねぎ(黄玉ねぎ)と、春先に出回る新玉ねぎ。両者の決定的な分岐点は、品種の違いに加え「収穫後の乾燥処理(風乾)を行っているかどうか」にあります。
通年流通している通常の玉ねぎは、初夏から秋にかけて収穫された後、風通しの良い乾燥小屋や低温貯蔵庫で約1カ月間しっかりと乾燥処理を施されます。外皮をカラカラに乾燥させることで休眠状態に入り、外敵や雑菌の侵入を防いで数カ月単位の長期保存を可能にしています。
これに対し、新玉ねぎは3月から5月頃に収穫される「極早生(ごくわせ)」や「早生(わせ)」と呼ばれる品種が中心です。収穫後、一切の乾燥工程を経ずにそのまま出荷されます。そのため、表皮は薄く水分を極限まで蓄えた状態を維持しています。
ここで多くの人が驚く科学的な事実があります。新玉ねぎと通常の玉ねぎの「糖度」は、実際にはどちらも約8〜9度前後であり、ほとんど差がありません。
それにもかかわらず新玉ねぎが圧倒的に甘く感じられるのは、新玉ねぎの水分量が約90〜92%に達しており、揮発性の刺激臭・辛味成分である「硫化アリル」の濃度が薄まっているからです。辛味による舌への刺激が劇的に抑えられる結果、玉ねぎが本来持っている豊かな甘味を味蕾(みらい)がストレートに感知します。
しかし、この「乾燥させていない高い水分量」こそが、新玉ねぎが極端に傷みやすい最大の弱点でもあります。水分をたっぷり含んだ組織は、常温の湿気や室温の上昇によって急速に自己消化や雑菌繁殖を招き、わずか数日で軟化やカビの発生へと直行してしまうのです。