リタイア計画を立てる際、世界的な理論的支柱として引用されてきたのが、米トリニティ大学の教授陣が発表した「4パーセントルール」です。年間支出の25倍の資産を築き、それを年利4%で運用しながら取り崩していけば元本を減らさずに暮らせるという試算ですが、この数式には日本国内で運用する上での重大な前提抜け落ちが存在します。
第一に、為替リスクと国内税制です。米国株を主軸とするインデックスファンドの分配金や譲渡益には、国内で約20.315%の申告分離課税が課されます。第二に、過去30年間の右肩上がり相場に基づいたバックテスト結果であり、リタイア直後に大暴落が訪れる「収益率の順序リスク(シーケンス・オブ・リターン・リスク)」を過小評価しがちです。年間300万円の基礎生活費を賄うために必要な元本を7,500万円と試算しても、インフレ率2〜3%が継続すれば、実質的な購買力は年々目減りしていきます。
精緻なFIRE生活費シミュレーションを行うと、夫婦2人・子ども1人の世帯でゆとりのある生活を送る場合、教育費のピークや老後の医療費を加味すれば最低でも1億2,000万円前後のFIRE必要資産が現実的なボーダーラインとなります。新NISAの非課税投資枠(1人あたり1,800万円)を夫婦でフル活用したとしても、非課税運用の枠を超えた余剰資金の運用には相応の税負担と市場変動リスクが伴う点を軽視してはなりません。