「飛鳥文化アタック」という語句を耳にしたとき、日本史を学んだ者であれば誰しもが、推古朝を中心とした7世紀前半のきらびやかな仏教文化を連想するはずです。法隆寺金堂の釈迦三尊像、百済観音、玉虫厨子――東アジア諸国との活発な交流を経て花開いた、我が国における仏教美術の黎明期。しかし、『ギャグマンガ日和』の作中で描かれた実態は、そうした優雅な歴史的趣きを木っ端微塵に打ち砕くものでした。
結論から言えば、飛鳥文化アタックの元ネタとなる歴史的武術や伝承は実在しません。その実体は、聖徳太子が助走をつけて(あるいはその場から突発的に)相手の顔面や胴体に向けて両足を揃えて飛び込む、プロレス技の「フロント・ドロップキック」そのものです。増田こうすけ氏が月刊少年ジャンプ(後にジャンプスクエアへ移籍)で連載していた原作において、高貴な身分であるはずの太子が、従者である小野妹子に対して何の脈絡もなく繰り出した単なる暴力行為に、仰々しい歴史用語を被せたことが誕生の契機でした。
この技の真骨頂は、「飛鳥文化」という静的で格式高い教科書用語と、「アタック」という極めて直線的で粗野なカタカナ英語の強引な接続にあります。本来なら決して交わることのない二つの言葉を衝突させることで、読者の言語的常識を根底から揺さぶり、理屈抜きの笑いを生み出しました。元ネタを探ろうと歴史書を紐解いた真面目な読者ほど、あまりの無意味さと落差に激しい眩暈を覚える仕掛けとなっています。