劇場に入ると、そこは湿った土と古い紙の匂いが漂う薄暗い部屋だ。ヘッドセットを装着した瞬間、視界は19世紀風の石造りの研究所へと切り替わる。目の前で無邪気に笑う少女と、彼女に寄り添う大きな白い犬。しかし、物語の結末を知る観客にとって、その微笑ましさは恐怖以外の何物でもない。
演出を手掛けたクリエイターは「単なる追体験ではない。観客自身が『傍観者という名の加害者』になる感覚を設計した」と語る。最新のハプティクス(触覚技術)により、犬の毛並みや少女の温かい手がリアルに伝わるからこそ、その後の破滅が牙を剥くのだ。