1980年代、漫才師が日本武道館で単独コンサートを開くなど誰も想像していなかった。その前人未到の偉業を成し遂げたのがザ・ぼんちだ。レコード『恋のぼんちシート』は80万枚を超える大ヒットを記録。作詞・作曲を手がけた大滝詠一による先鋭的なガレージロック調のサウンドと、おさむの痙攣的な叫びが見事に融合し、日本のポップカルチャー史に残る怪作となった。
だが、その華々しい熱狂の裏側には過酷極まりない現実があった。分刻みで移動するスケジュール、睡眠時間はわずか数十分。移動のタクシー内でも点滴を打ちながら舞台へ向かう日々が続いた。喉は焼けただれ、精神も限界寸前。「当時は何が起きているのか自分たちでも分からんかった」と後に振り返るほどの狂騒劇のなかで、おさむは舞台に立つとスイッチを入れ直し、鬼気迫るテンションで客席を煽り続けた。時代の熱狂を一身に背負った男たちの、壮絶な生存競争の記録である。