映画『稲村ジェーン』を語る上で絶対に外せないのが、映画の枠を大きく超えて国民的名曲となった楽曲群の存在です。特にサザンオールスターズを代表する大名曲『真夏の果実』は、本作の主題歌として書き下ろされました。
桑田佳祐は映画の撮影現場にピアノを持ち込み、撮影の合間に波の音を聞きながらメロディを紡ぎ出しました。哀愁漂うラテンテイストのリズムと、桑田ならではの切ない歌詞世界は、映画の湿り気のある空気感と完璧に呼応し、日本レコード大賞のロック・ポップス部門大賞を受賞するなど音楽界に金字塔を打ち立てました。
また、インストゥルメンタル発祥でありながら絶大な人気を誇るサウンドトラック収録曲『希望の轍』も本作から誕生した傑作です。イントロのピアノフレーズが流れた瞬間に情景が浮かび上がるこの楽曲は、現在もJR東日本・茅ヶ崎駅の発車メロディとして愛され続けています。映画のサントラ盤でありながら、オリコンチャートでミリオンセラーを達成した奇跡のアルバムは、今聴いても一切の色褪せを感じさせません。