農家の嫁が直面する最大の修羅場であり、離婚原因の筆頭に挙げられるのが「義両親との同居問題」と「家父長制の残滓(ざんし)」です。地方都市や中山間地域では、敷地内同居を含め、完全同居を結婚の前提条件とする家風がいまだ根強く残っています。
同居生活において最も過酷なのは、プライバシーの完全な喪失です。鍵をかけない習慣のある集落では、早朝から近所の親戚や近隣住民が無言で勝手口から上がり込んでくることすら日常茶飯事。「休日の朝にリビングでパジャマのままくつろぐことすら許されない」「育児の方針に義母が過干渉し、自分の子どもなのに主導権が握れない」という精神的ストレスは、都市部育ちの女性にとっては想像を絶する拷問に近い環境と言えます。
さらに問題を悪化させるのが、「夫の無関心・無力化」です。義両親と嫁の間で軋轢(あつれき)が生じた際、夫が実の親に対して毅然とした態度を取れず、「うちのやり方に合わせてやってくれ」「親父の機嫌を損ねると経営が回らない」と親側に同調してしまうケースが極めて目立ちます。家族社会学において指摘される「心理的バウンダリー(境界線)の崩壊」と「親子の共依存構造」がここに成立し、妻は家の中で完全に孤立無援へと追いやられ、最終的に調停離婚や別居へ突き進むことになります。