2010年10月にTBS系列の深夜枠で放送が開始された『闇金ウシジマくん』ドラマ シーズン1は、真鍋昌平の伝説的コミックを実写化した問題作でした。法外な暴利「10日で5割(トゴ)」を取り立て、債務者を容赦なく追い詰める主人公・丑嶋馨を演じた山田孝之の怪演は、深夜ドラマの歴史を塗り替えるほどの衝撃を与えました。その冷酷非道なカウカウファイナンスの事務所に突如転がり込んできたのが、片瀬那奈演じる大久保千秋です。
闇金ウシジマくんにおける片瀬那奈の役柄は、元AV女優という過酷な過去を背負いながら、借金返済のためにカウカウファイナンスで受付兼事務員として働く女性でした。オフィスで債務者が暴力に晒され、精神的に解体されていく凄惨な現場を目撃するたび、千秋は激しい動揺と嫌悪感を露わにします。この「狂気に対する生理的な拒絶」こそが、視聴者の視点そのものでした。当時のテレビドラマ関係者は次のように証言しています。
「ウシジマくんという作品は、下手をすれば全キャラクターが非情かつ破滅的で、一般の視聴者が共感の手がかりを失うリスクを孕んでいました。片瀬さんが演じた千秋が、丑嶋の冷徹なやり口に眉をひそめ、債務者に同情の眼差しを向けるクッションがあったからこそ、ドラマは単なるグロテスクな暴力モノに堕ちず、人間ドラマとして成立したのです」
モデル出身でスタイリッシュな都会派美女のイメージが強かった片瀬那奈が、ノーメイクに近い表情で人間の生々しい汚濁に直面する演技を見せたことは、業界内でも片瀬那奈の演技力の評判を飛躍的に高める契機となりました。主役の山田孝之との共演シーンでは、無表情で淡々と理詰めの暴論を吐く丑嶋と、感情を露わにして反発する千秋との間に張り詰めた緊張感が漂い、作品のドラマツルギーを力強く牽引しました。