祇園甲部歌舞練場の敷地周辺を語るうえで外せないのが、劇場に隣接する歴史的名建築「弥栄会館(やさかかいかん)」を巡る動向です。昭和11年(1936年)に完成した弥栄会館は、城郭風の銅板葺き屋根とアール・デコ調の近代建築が融合した類稀な昭和初期の名建築ですが、こちらも老朽化と耐震基準の壁に直面していました。
この歴史的空間の再生に向け、八坂女紅場学園がパートナーに選んだのが帝国ホテルでした。弥栄会館の象徴的な外観や銅板屋根などの主要ファサードを高度な技術で保全・継承しながら、内部を最高級ホテルへとコンバージョンする開発計画が進行。「帝国ホテル 京都」の誕生は、花街が培ってきた芸能文化と国際的なラグジュアリー観光が歴史上初めて本格的に融合する象徴的事例となっています。
地元関係者の証言によると、「単に建物を売却して外資系ホテルにするのではなく、花街の土地と歴史を次代に残すため、日本を代表する格式を持つ帝国ホテルとの長期定期借地契約を選択した」という経緯があります。歌舞練場での舞台鑑賞、格式ある庭園散策、そして上質な滞在体験が一連のカルチャー動線として結ばれる構造がここに完成しました。