オオルリのさえずりが人間にとって心地よく響く背景には、鳥類の音響生態学(バイオアコースティクス)における合理的な理由が存在します。オオルリの基本周波数はおよそ3kHz〜6kHzの高周波帯に集中しており、これは人間が最も明瞭に知覚しやすい聴覚感度帯と合致しています。さらに、彼らが縄張りを構える山間の渓流沿いは、水流の「ザーッ」という低周波ノイズ(主に1kHz以下)が常に満ちている環境です。激しい水音にかき消されることなく遠くまで届かせるため、オオルリは澄んだ高音域で倍音成分を豊かに含んだ発声を進化させてきました。
日本三鳴鳥として並び称されるウグイス(春を告げる軽快な響き)、コマドリ(渓流の岩場で響く馬の嘶きのような高音)と比較しても、オオルリのさえずりは「フルートのような透明感と伸びやかな余韻」において群を抜いています。東南アジアからの長い渡りを終えた雄が、縄張りの宣言と雌への求愛のために高木の梢(こずえ)から放つエネルギーは、森全体の空気を震わせるほどの迫力を持っています。