ネット上の情報や果物愛好家の間には、ぐんま名月に関するいくつかの誤解が流布している。失敗しない果実選びのために、それらの真偽を正しく整理しておく必要がある。
最も大きな誤解が「蜜が入っていない個体は甘くない、ハズレである」という思い込みだ。植物生理学上、りんごの蜜(ソルビトール)そのものは、砂糖のような強い甘味を持つわけではない。ソルビトール自体はショ糖に比べて甘味が穏やかであり、蜜はあくまで「葉で光合成された糖分が果実に送られ、これ以上果肉に糖(果糖・ショ糖)を蓄えきれなくなったサイン」として蓄積される。つまり、外見上や肉眼で蜜が見えにくい個体であっても、細胞内には糖分が完全に満ちており、糖度計で測定すれば15度前後の高い数値を記録することが多々ある。「蜜の有無」だけで品質の優劣を決めつけるのは早計だ。
また、「黄色いりんごだから王林と同じように日持ちする」という認識も危険な誤解である。王林は比較的緻密で日持ちが良い品種だが、ぐんま名月は果皮が薄く果肉水分量が非常に多いため、常温での耐久力は低い。特に暖房の効いた現代の住空間では、蜜の部分から酸化が進み、果肉が黒ずむ「蜜褐変(みつかっぺん)」という障害を引き起こしやすい。本品種は「秋の生鮮フルーツ」としての繊細さを併せ持っていることを知っておくべきだ。