名古屋における手羽先文化を語る上で、絶対に避けて通れないのが二大巨頭の存在だ。唐揚げといえばもも肉が常識だった時代に、手羽先の価値を見出したのが「風来坊」の創業者・大坪重雄である。狭い屋台からスタートした大坪は、甘辛いタレを二重に塗り、胡椒を効かせるという独自の調理法を確立。捨てられる運命にあった肉を至高の鶏料理へと昇華させた。風来坊の味は、上品な甘みとコクのあるタレが肉本来の旨味を引き立てる、まさに優雅な「元祖の品格」を備えている。
対する「世界の山ちゃん」は、強烈なスパイスの刺激で全国にその名をとどろかせた。創業者である山本重雄が展開した「幻の手羽先」は、刺激的な胡椒の辛さとクセになる塩味が特徴だ。現在、運営元の株式会社エスワイフードは国内にとどまらず海外展開も加速させており、一過性のブームを超えた居酒屋チェーンとしての確固たる地位を築き上げた。
両者の違いは一目瞭然だ。風来坊が秘伝のタレとゴマの風味で深みある味わいを追及する伝統派なら、山ちゃんはガツンと来る辛さと酒が進む刺激を押し出す革新派。この対比こそが、名古屋めしの層を厚くし、今日まで人々を飽きさせない最大の原動力となっている。