現地を訪れた参拝者がまず息を呑むのは、周囲の開けた斑鳩の空にすっきりと伸びる塔のプロポーションです。公式の建築記録および文化庁の計測データによると、法隆寺五重塔の高さは基壇上から相輪の先端までで約31.5メートル、地面から基壇を含めた全高では約32.5メートルに達します。
一般的な現代の鉄筋コンクリート造マンションやオフィスビルは1階あたり約3〜3.3メートルで設計されるため、法隆寺の五重塔はおよそビル10階分に相当する高さを持ちます。重機や高度な計算機が存在しなかった7世紀末から8世紀初頭の飛鳥・白鳳期において、人力と手斧(ちょうな)などの手工具だけでこの巨大高層木造建築を立ち上げた事実は、当時の土木・建築技術の極致を物語っています。
また、法隆寺五重塔の外観を特徴づけているのが、極めて大きな「逓減率(ていげんりつ)」です。最上層(5層目)の屋根の幅は、最下層(1層目)の屋根の幅に対しておよそ半分(約0.5倍)にまで絞り込まれています。後世の平安・鎌倉・江戸期に建てられた五重塔では、この比率が0.7〜0.8倍程度に留まることが多く、頭でっかちに見えやすいのに対し、法隆寺の塔は下層がどっしりと広く上層へ向かってシャープに収斂するピラミッド型の黄金比を形成しています。これが、数値以上の重厚感と安定した視覚美を鑑賞者に与える決定的な理由です。