セイレーンという存在を演じる上で、最大の障壁となったのが「聴く者を抗えない衝動に駆り立てる声」の説得力だ。記者の取材に対し、音響監督は次のように語っている。「綺麗な声を出すだけなら大勢のプロができる。だが、今回の役に必要なのは聴く者の理性を揺さぶる『毒』と、哀愁に満ちた『救い』の同居だった」
キャスト陣もまた、通常の音響収録とはまったく異なるアプローチを求められた。言葉のイントネーション一つ、息の抜き方一つに至るまでミリ単位の微調整が繰り返された。セリフと歌がシームレスに繋がる特殊な音響演出に対応するため、スタジオでは連日深夜まで緊張感あふれるアフレコが続いたという。