あのシーズン、読売ジャイアンツを率いた長嶋茂雄監督は「勝つ、勝つ、勝つ」という強烈な言葉でナインを鼓舞し続けた。最大9ゲーム差あったリードを縮められ、ついに同率首位で並ばれた極限のプレッシャー。長嶋監督が選択したのは、エース投手を総動員する執念の継投策だった。斎藤雅樹、槙原寛己、そして桑田真澄という3本柱を惜しみなく投入する決断には、勝利だけを追求する冷徹な計算と熱き執念が同居していた。
一方、中日ドラゴンズを指揮した高木守道監督もまた、ホームであるナゴヤ球場のファンの後押しを受け、一歩も退かない構えを見せた。泥臭く一死一勝を奪いにいく手堅い采配。日本野球機構の長い歴史の中でも極めて異例な「勝者がすべてを得る」直接対決において、両指揮官が繰り出した一手の裏には、それぞれの野球観と勝利への強い意思が交錯していた。