紫陽花が放つ魅力を語る上で、日本のアニメーションが培ってきた「雨の表現」を無視することはできない。雨の新宿御苑を舞台に繊細な心の機微を描いた新海誠監督の『言の葉の庭』では、葉を打つ雨滴のリアルな物理挙動と、瑞々しい紫陽花の色彩が見事に調和していた。濡れた花びらが周囲の光を反射する描写は、アニメーション表現におけるひとつの頂点と言える。
また、株式会社スタジオジブリの諸作品に見られる、湿気を帯びた空気そのものを画面に定着させる背景美術も偉大な教科書だ。花そのものを単体で可愛らしく見せるだけでなく、背後にあるどんよりとした雨雲、濡れて黒ずんだ土、雨粒を弾く葉のツヤ。周囲の環境をあわせて設計することで、紫陽花の瑞々しさは何倍にも引き立つ。プロのグラフィックデザインにおいても、こうした背景の「湿度設計」を取り入れる動きが定着している。